アレルギー科

アレルギーとは

特定の物質（抗原）に対して身体が過剰に反応する状態をアレルギーといいます。このアレルギーの原因となる抗原をアレルゲンと呼びます。

人間の体には、病原体（細菌、ウイルス等）などの異物から身体を守るための免疫機能が備わっており、抗体が作られます。これにより、同じ抗原（病原体等）が再び体内に侵入しても速やかに排除されます（抗原抗体反応）。しかし、抗体が作られる過程で誤りが生じたり、本来無害な物質に対しても抗体が作られたりすることがあります。これにより、免疫機能が過剰に反応し、様々な症状が現れることがあります。これをアレルギー反応といい、当院ではこのようなアレルギー疾患の診療も行っています。

主な症状に心当たりがあれば、アレルギー疾患の可能性があります

主なアレルギー疾患

アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支喘息 など

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは、強いかゆみを伴う慢性的な皮膚炎のことです。この症状は、良くなったり悪くなったりを繰り返します。多くの場合、乳幼児期に発症し、生後2～3ヵ月を過ぎた頃から見られるようになります。

原因は完全には特定されていませんが、アレルギーを起こしやすい体質（アトピー素因）と環境要因が組み合わさることで発症すると考えられています。

主な症状は皮膚の乾燥と湿疹、それに伴う強いかゆみです。乳児期には皮膚のカサカサはあまり目立ちませんが、幼児期になると皮膚の乾燥が顕著になり、症状が強まることが多いです。生まれ持った体質のため、根本的に治ることはありませんが、思春期を過ぎる頃には症状が落ち着くことがよくあります。しかし、一部の患者さんは成人後も症状が続くことがあります。

治療について

炎症が起きている皮膚（湿疹）には、主にステロイド外用薬を用いて治療を行います。その後は炎症を予防するために、保湿剤を使用して皮膚の乾燥を防いだり、皮膚を清潔に保つといったスキンケアを日常的に行う必要があります。また、強いかゆみがある場合には抗ヒスタミン薬を服用することもありますが、効果は限定的です。さらに、近年では、十分な外用薬の治療でも効果が不十分な患者に対して、注射製剤による治療も開始され、治療の選択肢が広がっています。

食物アレルギー

食物がアレルゲンとなり、それによって様々な症状が現れる状態を食物アレルギーといいます。アレルギー反応が起こるアレルゲンの量は、お子さんによって異なります。

原因となる食物は個人によって異なりますが、乳幼児期には牛乳、小麦、たまごなどが多く、学童期（小学生）以降になると、甲殻類（エビ、カニなど）、果物（リンゴ、バナナ、キウイなど）、ナッツ類（ピーナッツ、カシューナッツなど）が原因となることが多いです。

よく見られる症状は、じんましん（急に皮膚が腫れたり赤くなったりする）です。皮膚の症状に加えて、咳や喘鳴（ゼーゼー、ヒューヒューなどの呼吸音）、腹痛、嘔吐、下痢などが起こることがあります（アナフィラキシー）。中には、血圧が低下して顔面蒼白やぐったりとした状態、意識消失が見られることもあり、生命に関わる可能性があるため、要注意です（アナフィラキシーショック）。

治療について

原因となるアレルゲンが特定されている場合は、その食品を避けるようにします。「食物負荷試験」を行って原因を特定し、安全に食べられる量を調べることができます。卵や牛乳、小麦、大豆などは少量ずつ体に取り込むことで食べられるようになるため、治療によってアレルギーを克服することができます（安全に量を増やしていく）。しかし、一方でアレルギーを一度獲得してしまうと、ずっと食べられなくなる場合も多くあります。

また、皮膚から抗原が体内に取り込まれることでアレルゲンを獲得することもあります。そのため、アトピー性皮膚炎など皮膚が弱い場合は、併せてスキンケア（皮膚の清潔と保湿）を行うことが必要です。

症状が発生した場合、抗アレルギー薬を服用したり、アナフィラキシーが起こった場合には、気管支拡張薬、ステロイド、アドレナリン筋肉注射を行うことがあります。アナフィラキシーが現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。

アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎や結膜炎では、鼻や眼の粘膜にアレルゲンが付着し、それを排除しようとする過剰反応によって、鼻水、鼻づまり、咳、眼脂、眼のかゆみなどの症状が現れます。また、患部を刺激することで鼻血や目の充血、まぶたの湿疹が起こることもあります。

4月頃や9月頃に花粉が飛散するため、この時期に症状を訴える方が多く見られます（花粉症）。4月頃の原因となる花粉はスギ、ヒノキ、ヨモギ、ブタクサが多く、9月頃にはイネが多くなります。これらの症状が特定の時期にのみ現れることから、季節性アレルギー性鼻炎とも呼ばれます。また、花粉症の患者さんの多くはアレルギー性結膜炎の症状も併発しています。

一方、ハウスダスト（カビ、ホコリ、ダニの死骸等）やペットの毛・フケ等がアレルゲンの患者さんは、季節に関係なく一年中発症します。これを通年性アレルギー性鼻炎といいます。

アレルギーの有無を調べるための検査としては、好酸球検査があります。また、アレルゲンを推測するために、血液検査や皮膚テスト（皮内テスト、スクラッチテスト）などが診断の補助に用いられます。

治療について

症状が強く出ている場合は、対症療法として抗ヒスタミン薬の内服薬を使用します。鼻づまりが強ければ、鼻噴霧用のステロイド薬を使用します。また、眼症状（目のかゆみ、充血など）がある場合には、抗ヒスタミン薬やステロイド系の点眼薬を使用します。

また、症状がひどい場合や治療が難しい場合には、鼻粘膜の表面をレーザーで焼いて原因を直接除去するレーザー治療が選択されることもあります。

このほか、原因とされるアレルゲンを少量ずつ体内に投与し、治癒を目指す免疫療法もあります。ダニやスギがアレルゲンの患者さんには、それらを含む錠剤を飲み続けることで完治または症状の軽減が期待できる舌下免疫療法もあります。ただし、この場合、長期間の治療が必要となります。

気管支喘息

慢性的な気道の炎症によって気道が狭くなり、呼吸困難や喘鳴、咳などの症状が現れます。これらの症状は、夜間から早朝にかけて発作的に起こることが多いです。咳は一度始まると続きやすく、最悪の場合は呼吸が停止することもあります。

発症の原因の多くは、小児では何らかのアレルゲンが関係していることが多いです。たとえば、ハウスダスト、特定の食物、植物の花粉（スギ、ブタクサなど）などです。このほか、風邪、喫煙、ストレス、薬物（NSAIDs等）の使用、運動などによって、喘息の症状がさらに悪化することもあります。

診断を行うために、呼吸機能検査（スパイロメトリーなど）や血液検査を実施し、総合的に判断します。

治療について

気管支喘息の治療には、喘息発作が発生した際の治療（リリーバー）と、慢性的な炎症を抑えるための治療（コントローラー）があります。コントローラーの治療では、主に吸入ステロイド薬が使用されます。一方、リリーバーの治療では、短時間作用型β2刺激薬やステロイド薬（点滴、内服）が使用されます。